支え合う意義考える 2024年度 渡辺一史さん講演

 2024年度の第29回公開ケース研究会が10月8日、手稲区民センターで開かれ、ノンフィクションライターの渡辺一史さんが「なぜ人と人は支え合うのか」と題して講演しました。
 社会を明るくする運動手稲区推進委員会などが主催し、手稲区の保護司や学校関係者ら約120人が参加。渡辺さんは「こんな夜更けにバナナかよ」で大宅壮一ノンフィクション賞を受け、大泉洋さん主演で映画化されました。
 講演では、この著作について「人は誰かの役に立っているという実感がないと生きていけない。誰かを支えることによって実は自分が支えられている。これが映画を通じて一番知ってほしかった」と語りました。
 今年5月に滋賀県大津市で保護司が保護観察対象者に殺害された事件を例に「保護司は守秘義務を負っていても、仲間の保護司や観察官と柔軟に共有し、一人で背負ってしまわないことが大事」と促しました。
 また、2001年に札幌出身者が短大生を殺害した浅草レッサーパンダ事件の取材から、「事件前、保護司は軽度の知的障害のある対象者に定職に就くよう説諭するばかりだった」と、具体的な支援につなげる必要性を強調。障害者の自立生活運動が教えてくれることとして、「障害があっても、多少は社会に適応できない面がある人でも、適切な支援を受けながら、学業や仕事に従事して、その人なりの能力を生かして活躍できる社会をつくっていくことが、この先、ますます大切」と訴えました。
 最後に、協力校である手稲区前田北中の村松信幸校長が、「支え合うことの意義を深く考えさせられた」と総評を述べました。

支え合いについて講演する渡辺一史さん

デジタルタトゥーとは 2023年度

 第28回公開ケース研究会が2023年10月4日、手稲区民センターで開かれました。テーマは「デジタルタトゥーって何?子供を被害者にも加害者にもさせないためには…」です。
 手稲区と手稲区保護司会、札幌手稲更生保護女性会が主催。区内の中学校長や青少年育成委員、生徒の保護者ら約90人が参加しました。28回目にあたります。
 最初に新稜中の森長弘美校長が「その送信、ちょっと待って」と題して講演しました。それによると、9月初めのアンケートで全校生の95%がスマホなどの携帯端末を所持。ライン、インスタグラム、X、ティックトックといったSNSを利用し、3年生のSNS利用者の3割が問題のある動画や写真を見ていました
 デジタルタトゥーとは、動画や写真が本人の承諾なしにネットにいつまでも残ることです。森さんは「家庭でスマホの使用時間、使う場所、フィルター、料金について子供と話し合って、約束を徹底してほしい」と呼びかけました。
 次いで手稲署の植田健太警務係長が「SNS利用の脅威について」具体的に法律や事例を説明しました。「何かあれば警察に相談してほしい」と求めました。
 このあと、参加者は10グループごとに話し合いました。そこで出た質問に、講師を含む4人の助言者が答えました。北村美道・保護観察官はラインの書き込みから暴力に発展した事例を紹介。「デジタルタトゥーの典型として、服役して社会復帰する時に逮捕時の記事が実名で残っていると、就職活動にまずい」と語りました。高橋靖昌・札幌市教委児童生徒係長は「SNSの管理やルールづくりには、家庭の協力が重要」と述べました。

ヤングケアラーの実態は 2022年度

 2022年度の第27回公開ケース研究会は同年10月6日、手稲区民センターで開かれました。
 20、21年とコロナ禍で中止。22年度は主催団体として手稲区が加わりました。感染予防のため、講演会のみとしました。
 手稲中の駒込幸則校長が、札幌市のヤングケアラーの現況について中学高校生への実態調査結果をもとに説明。自分が世話をしている家族が「いる」と答えた「ヤングケアラー」の数は、中学生で4.3%、高校生で4.1%でした。支援してほしいことは「自分の自由に過ごせる場所がほしい」が2割弱と比較的多かったです。各学校は4割がヤングケアラーの存在を把握していました。
 このあと、自らヤングケアラーだった二本松一将さんが講演しました。二本松さんは心の病の親を世話していましたが、人生をやり直したいと、本州から北海道に来て大学に入りました。虐待を受けていたことを自覚し、こども食堂の実態について研究。寺に寄贈された食料を配るNPO「おてらおやつクラブ」事務局や児童相談所の一時保護夜間指導員をしています。過去のつらい人生を糧として、子どもや若者を支援する側に立って頑張る姿が共感を呼んでいました。

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